1. ホーム
  2. 研究・社会貢献
  3. 東北福祉大学の挑戦 ー地域共創に向けてー 【福祉・医療施設の開設】
研究・社会貢献

東北福祉大学の挑戦 ー地域共創に向けてー

福祉・医療施設の開設

福祉教育に対する社会的要請

福祉系の大学は社会福祉事業に携わる職業人の養成を主要な任務としてきましたが、社会福祉の政策課題と福祉サービスの供給体制における変化によって、社会福祉教育や人材養成の課題内容にも転換が起こってきました。

1970年代後半から80年代には、福祉サービスの拡張とサービス供給主体の拡大によって、国及び行政の主導による公的扶助を特徴とした戦後の社会福祉が変質してくるに伴い、福祉人材の確保や専門職化が求められました。90年代に入ると、社会福祉の対象の普遍化・一般化、社会福祉事業の範囲の見直しと拡充、その実施における市町村への権限の移譲等を趣旨とする福祉関係八法の改正や、地域における自立生活への支援を目標に掲げるゴールド・プラン、エンゼル・プラン、ノーマライゼーション・プラン等の施行に伴って、社会福祉実践の内容と人材養成のあり方が議論の的となりました。

さらに、2000年の介護保険制度の実施や社会福祉法の改正による、地域福祉型社会福祉の推進や多元的福祉体制の構築という政策課題に対応して、社会福祉人材の新たな職務と社会福祉教育の新たなあり方が要請されてきます。このことから、2007年には、社会福祉士及び介護福祉士法が20年ぶりに改正され、介護福祉士の資質と専門性を向上させるため、「求められる介護福祉士像」が掲げられています。

また、地域の観点からみると、1970年代に「地域福祉」の概念は登場していましたが、地域を基盤としたケアを重視する方向に明確な政策転換がなされたのは、1990年代に入ってからです。上にふれた相次ぐ法改正を通じて、「地域福祉」が法制化され、福祉政策実施体制の一つの柱に据えられてきました。しかし、「地域福祉」は「社会福祉」の単なる地域版ということではなく、新たな福祉サービスを体系化し、それを包括的な地域ケア・システムとして当該地域にいかに作動可能とするかが課題となります。そのため、各々の地域特性に即して、福祉サービスと医療・保健サービスとの意識的な連携や統合を図ることが要請され、2006年の改正介護保険法の施行に伴い、地域包括支援センターが新設されています。

こうした一連の政策転換や制度改正に並行して、人材養成と実践現場の間のより一層緊密な連携と、医療・保健・福祉にまたがって、現場的実践論と制度・政策論を接合させる新たな研究の開拓が求められています。したがって、「大学の地域貢献」は大学の従来の任務に対する付加部分ではなく、福祉教育においても福祉研究においても、「地域」という概念が中心部分をなしてきているといえます。

福祉施設の開設

東北福祉大学は、1995年に社会福祉法人『東北福祉会』を設立し、翌年に最初の施設『せんだんの杜』を開設して以来、漸次大学関連の諸施設を立ち上げてきました。

本学が社会福祉法人の設立を意図したのは、90年代に入って、福祉施設の性格に関し、従来の救貧型から専門援助型へ、また収容型から地域開放型への転換が明確になり、法制度の規制緩和によって、法人に委託させる社会福祉サービスの決定業務が拡大したこと、それらに伴って、社会福祉人材の育成問題がより本格化したことを背景としました。

本学と自治体との間で法人設立の協議を開始したのは1992年です。その当時は、行政側に教育研究機関の大学が社会福祉法人を設立することに対する理解はなく、いわば時代に先駆けての企図であったため、法人設立まで三年を要したのです。そのため、法人設立の意図をより明確にし、設立誓書には、「その時代、その時代で社会、地域、住民の方々が必要として望む、新しい福祉サービスの創出・創造」「その成果を社会化して全国に発信する」「その時代、社会、人々が望む福祉教育の新しいシステムを作る」、つまり本学の『行学一如』の理念の具現化を明示的に目的に設定しています。

この法人が最初に開設した特別養護老人施設『せんだんの杜』は、事業の開始にあたって、「利用者本位の原則」「まちのサービスセンター」「介護付住宅群」の三つを旗印に掲げました。日本の高齢者介護福祉施設は、理念の上では、従来の「保護・収容の場」から「生活の場」への転換を図りつつありましたが、その理念の転換を施設における処遇に具体化するには、新たな自主サービスの試行を通じて以外になかったからです。そのため、認知症の利用者を対象とする「ユニットケア」(少人数生活空間)の立ち上げ、ユニットケアを地域の中に取り込む「逆デイケア」の開始、在宅ケアの充実を図る「地域密着小規模多機能分散型ケア」等の事業を行い、これらの先行的な試行は後に国の施策に取り上げられています。

さらに地域の住民と協働して地域ニーズの調査を行い、地域の介護力向上と福祉人材の育成を目的とした「ホームヘルパー養成講座」や、地域福祉の推進と啓発のための「住民福祉講座」、子供から高齢者に至る住民を対象とする「総合相談センター」の開設などの自主事業を行っています。

『せんだんの杜』に次いで開設された『せんだんの杜ものう』『せんだんの里』そしてフィンランド型の自立支援方式をも取り入れた『せんだんの館』は、特別養護老人ホーム、グループホーム、ショートステイ、デイサービス、訪問介護など様々な事業を行う複合体であり、それぞれが地域のコミュニティセンターとしての役割を果たしています。これらの施設が創意工夫を凝して行う各種自主事業は、施設福祉と在宅福祉の接合を通じて、包括的な地域ケアシステムのモデルを模索する試みであると同時に、それらの活動への参加によって、職員の能力向上や意識改革がみられ、それがひるがえって、福祉人材の養成プログラムのバージョンアップに連なっています。

もう1つの老人保健施設の場合、法制度上は、医師の管理の下、介護・看護・リハビリ・スタッフにより日常生活に必要な心身機能の向上に向けた支援を行い、自宅への復帰を目指す中間施設としての役割を担っています。しかし、現状は、「特養の待機」施設的な状況にあって、改善の必要が種々指摘されていました。

これらの取り組みに共通していることは、真の学習が生ずる実環境に学生を結びつけ、学生が『行学』を自らの中で一致させ、主体的かつ創造的な行為に挑んでいく現場主義を重視していることです。現場に深くコミットすることによって、個人の生活にばかり関心を寄せる視野の狭窄から脱し、自己を越えたところにある大切なことがらにまで視野を広げ、また目に見えている現象や出来事の見かけよりも深いところまで掘り下げ、行為の中で、そして『行学』を通して問われる適切な判断を下す力量を高めること、共通の目的に向かって他者と協力し、共働作業をするなかで自分をより高めていくことに習熟することを目指しています。

もう1つの共通点は、課題中心の自己反省的な学習を重視していることです。仕事の現場的体験を少しでも経ることによって、仕事とは、個々の作業ではなく、課題の達成に向けた一連の過程であり、課題を達成するためにはあらゆる能力が総合的に動員されること、また、その時々の感情を乗り越えて着実に前進する必要があること、そして、ものごとをなし遂げ、責任を果たした時、人は自らの尊厳を実感し、自信を獲得して、人間的成長を果たすことを学ぶからです。

知識社会といわれる今日、知識の世界は流動してやまないことから、いかに学ぶかを学ぶこと、つまり学習の方法を身につけることが肝要だといわれます。同時に、学生は自らの人生の可能性を広く探究し、自分の行うことがらを通して謙虚に思考を開き、技能を伴う知識と知識の基盤にもとづく技能を習得し続けるなかで、自分探しと自分作りの道を歩むことになります。本学が種々の教育改革に取り組んでいるのは、学生に自分自身の人生の闘いから一歩も退かない不屈の姿勢を涵養し、学生の自己実現に向けた闘いを強力に支援することが大学の任務の中核をなすとの認識に立っているからです。

本学が開設した『せんだんの丘』は、利用者主体の原則に基づき、「自宅復帰」を中心に据えたケアサービスの提供、全職種間のチームケアによるサービスの提供を基本理念に掲げました。この場合は、「利用者本位」「個別性」「その人らしく」といった質の高いケアと、法定の人員配置基準から課される業務の効率という、しばしば矛盾する要請に応える施設運営のモデルをいかにして作るかが第一の課題となります。

その課題に立ち向かうには明確な具体的方法論を必要としますが、後になって施設運営のモデルとして全国的に注目される方策、ユニットケアとチームアプローチのセットを採用しました。この業務体制によって職域を越えた生活全般への関わりが安全・安心の生活環境を創り出し、職員相互に対しては本当に必要な専門性の明確化となり、利用者にとっては結果的にひとり一人を尊重するケアが作り出されることになりました。さらに、施設内ケアにそうした効果が生み出されたことによって、施設外にリーチを伸ばす、通所リハビリテーションや福祉用具貸与、訪問介護、居宅介護等の事業拡大が可能になっています。

『せんだんの丘』の試みは、この種の施設にとっては、まず、目前の入浴、食事、排泄の三大処遇に対して、少人数、高品質、高効率のケアを確実に提供できるシステムと、現場実践への全員参加によって、職員全員の質を高く維持する人材育成のシステムの構築があってこそ、地域生活支援型サービスの提供が可能となることを示しています。

大学関連福祉・医療施設

  • 社会福祉法人 東北福祉会(1995年設立)
    • せんだんの杜(1996)
    • せんだんの杜保育園(1999)
    • せんだんの杜ものう(1999)
    • せんだんの里(2001)
    • 高齢者認知症介護研究研修仙台センター(2001)
    • せんだんの館(2004)
  • 医療法人社団 東北福祉会(1998年設立)
    • せんだんの丘
  • 予防福祉健康増進センター(2005年設立)
    • 予防福祉クリニック(2005)
  • 東北福祉大学せんだんホスピタル(2008年開設)

保健・医療施設の開設

本学は、高齢者介護施設に並んで、保健医療施設も開設しています。

1999年ゴールドプラン21に「認知症高齢者支援対策の推進」が掲げられ、認知症に対する医学的研究と認知症高齢者に対する介護サービスの充実及び質的向上を図るため、全国に三つの『認知症介護研究・研修センター』が設置されました。その1つが、宮城県、仙台市そして東北福祉大学がバックアップを行う『仙台センター』(北海道、東北、中国、四国地方を管轄する)で、本学の国見ヶ丘キャンパスに所在しています。このセンターは、認知症高齢者の介護の専門性を高め、質の高い介護技術を理論化することを目的として、実践的なテーマを中心に、大学や研究機関との連携による学際的共同研究を推進しています。また、認知症介護の専門技術に関する指導・普及を行う専門職員に対する養成研修、先進的な知識・技術を研修するために、内外の研究者や介護実務者を招待して行われる講演会、シンポジウムや市民開放講座の開催を行っています。

2008年には、本学は、これまで進めてきた福祉研究の成果を基に、医療と保健と福祉が融合した心のケアに取り組むため、『せんだんホスピタル』を開院しています。このホスピタルは、精神科、児童精神科、内科の三科を診療科としていますが、とりわけ、児童思春期精神医学と精神科在宅医療の二本の柱を掲げているところに特徴があります。前者は、複雑な現代社会を背景に次々と起こる、従来の枠には収まり切らない心の病に対し、子どものニーズに即して積極的に応答する取り組みであり、後者は、包括型地域生活支援と呼ばれるもので、重い精神障害をもつ人たちでも住み慣れた地域に安心して暮らし続けていけるように、多職種のスタッフが積極的な訪問によって包括的なサービスを直接提供するプログラムです。いずれも、保健・福祉と融合した医療を提供することで、ノーマライゼーション社会の実現に向けて貢献しようとするものです。

社会福祉や保健・医療の質的変化は政策の転換や法制度の改革によって自動的に達成されるものではありません。サービス提供のあり方、新たなサービスの開発のいずれにおいても、福祉や保健・医療におけるイノベーションは、一律の処方箋が存在せず、その人その人に即して処遇すべき現場における問題解決への取り組みの中で生まれます。

上にとり上げた諸施設は、自らを制度が予定している機能を単に実行する場として以上に、ケアとは何かという問いに向き合い、経営的基盤の確立に加えて、サービス提供の方法と内容の開発に継続的に取り組むことによって、利用者や家族、地域住民からの信頼と評価を得ることができます。また日常生活業務の中に実習指導が組み込まれ、問題の解決策の発見に職員と学生が共に関わることが、相互作用と相互学習のダイナミックスを生み、職員の資質の向上と学生の能動的な職業意識の明確化に資しています。

したがって、福祉系の本大学が福祉施設や保健医療施設をもつことは、社会福祉や保健医療をめぐる制度論や政策論と実践の技術論や経営論を接合することによって、新たな研究分野を開拓し、その分野でのイノベーションを図るためであるといえます。

本ページに関するお問い合わせ先

〒981-8522 宮城県仙台市青葉区国見1丁目8番1号
東北福祉大学 企画部
TEL:022-717-3329 FAX:022-233-3113

Copyright © Tohoku Fukushi University. All rights reserved.